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   今朝から、何度か渡された携帯電話が鳴っている。

   鳳長太郎が俺のために作ったと言う曲が、繰り返し鳴っていたので、かけてきたのは

    ヤツだろう。


   俺は、ベッドの枕の下に、その携帯を押し込み、音がなるべく聞こえないようにした。

    それから、五分くらい経過して、やっと気がついて電源をオフにした。


   そのまま携帯電話をシーツ上へ投げ捨て、俺はほっとしながらベッドから離れた。

   鳳も学校を欠席したらしい。

   何が言いたいのかは知らないが、俺はとてもアイツに会う気分にはなれない。

   そっと、寝室の窓に近寄って、カーテンを開くと外の景色を覗いた。

   俺の背丈の二倍はあるデカイ窓の外には、手すりのついたベランダがある。しかし、俺が窓の

    取っ手をいくら動かしてみても全く開かなかった。


   もし、窓が開いてベランダに出られても、四階の高さから飛び降りる度胸は、さすがに俺にも

    無かった。
それは、死ぬ時にやる事としか思えない。

   ただ、小さな天窓が天井近くで一つだけ開いており、春風はそこからだけ流れこんでいる。

   この部屋は、南棟の玄関先とは反対側にあたる。

   下は中庭のようだった。花々が目を楽しませる洋風の庭園になっている。四方は全て建物に

    囲まれているので、ここから、下へ降りても外へは抜け出せないだろう。


   俺は寝室を出ると、室内を探索した。

    
この部屋にはベッドの置かれている寝室の他に、三部屋もついていた。

   最も入り口に近い応接セットが一式置いてある部屋、その右側に俺が今いる寝室、

    隣にウォーキングクローゼットや鏡台の置かれた部屋がある。

    大きなクローゼットには、山のような衣服や靴や装飾品が置かれていた。全て俺の物では

    無かったので、鳳家の連中が購入してそろえたに違いない。


   中央の応接室を挟んで逆側には、勉強机や本棚が置かれている書斎がある。

    俺の学校の道具が全てそろえられていた。
自宅に置かれていたテニスラケットなども、

    全て集められていたので驚いた。


   さらに、トイレも浴室も洗面所も全てそろっている。

   ホテルにあるスイートルームの構造に良く似ていた。

   おまけに、もっと驚いた事は、全ての部屋にカメラが設置されていた事だった。さすがに

    風呂場とトイレには無かったが。


   俺の部屋の隣は、メイド頭である寿の部屋らしい。

   このカメラの映像を見ているのは彼女だろうか?

   それとも、当主の鳳長太郎本人なんだろうか?

   俺は応接室に行き、出口の扉を調べてみたが、外側から鍵がかけられている様子だった。

   ここの連中は、俺をこの部屋から出さないつもりらしい。

   俺は、ソファのクッションを掴むと、カメラに向かって力いっぱい投げつけた。





         その9<謎のメイド>へ続く・・・行ってみる→その9・謎のメイド




          
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